祭りの夜、流刑地

 

駅ビルの書店で、『祭の夜』という本を買いました。

 

パヴェーゼはあまり知られていない作家のような気がします。

どちらかというと、彼はマイナーですよね。個人的にはちょっと気になる作家だったんですけれども。

 

立ち読みした時、『流刑地』が気に入りました。

何らかの理由によって、人生から疎外されている者たちがやってくる流刑地。

 

彼は、自分自身を含めた状況を、客観的に見る力がある人間だったのだと思います。

 

たとえば、『侵入者』。

主人公は、あくまで同居人を悪人と定めているわけではない。

悪人であるとか、善人であるとか、そういったすべての判断を常に留保している。

主人公は、冷静に状況を見ようとする。

でも、そうすることで、中立の立場を取ろうと努力することで、苦しくなってくる。

 

冷静に、客観的に物事を見ようとすることが、主人公に絶望をもたらす。

状況を言語化し、分析することで、周りの日常が異化されてしまうからだ。

夢から覚めたような状態になり、自分だけが、普通の人々が見ている夢から締め出されているような感覚。

 

彼は、やはり、追放された人間だったのでしょう。

 

彼にとって心休まる場所、あるいは追い求めた風景というのは、実は『流刑地』で見たような風景なのではないでしょうか。

夏の暑さ。イタリアの自然。海や丘。

まだ名前のない無名の風景たち。

 

そこにはいろんな人間がやってくる。

小説の主人公。

政治的に追放されたもの。恋に破れた者。

わたしやあなた。

 

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彼がもっと書き続けていたら、もっと良いものが書けていたのではないかな、などと思ったりしました。

でも、彼が残した、やさしくて滑らかな文章は、ある種の人々には感銘を与えるに違いありません。