まだ無名の風景たち

そしてその情景

失恋した

失恋した。僕の人生の中で一番惹かれた人だった。その人の存在は僕の心奥深くまでやってきた。気が付いたら、好きだった。休日でもその人のことを考えるくらいだった。声が聞きたい、顔が見たい。本気でこんなこと思うなんて、こんなに他人のことを深く求めるなんて、今まで生きてきて初めてだった。僕は今まで人を好きになる、本気で好きなるということがなかったのかもしれない。
そして今回このようなことが起きた。こんな女性今まで会ったことないよ、というような女性だった。僕の考えていることすべて見通しているような、そんな女性だった。人の状態を察する観察する能力がびっくりするくらい秀でていて、人の小さな変化でも気づく人だった。他人と距離を置いてしまう自分が、この女性前ではまったくなくて、むしろ近づきたかった。女性の方から僕のそばに来てくれるとうれしかった。
僕は、寝ても覚めてもその人の存在が頭から離れず、テレビ見ても、ゲームやっても全然ダメで、すぐ飽きてしまった。スマホいじっても、ランニングとかして無理やり体を疲れさせても、効果はなかった。
彼女を食事に誘った。一緒にいろいろ話したりした。過去のこと、これからのこと、いろいろ話した。でも、最後は優しく遠回しに断られた。彼女は僕の好意がわかっていた。彼女はそれを察していた。僕の考えは見透かされていた。彼女には長くお付き合いしている男性がいた。歳も相当離れているらしく、おそらく裕福だった。トイレで泣いた。二十代になって泣いたことなんてあったっけ?最近は仕事が忙しすぎ、土曜日も会社に出るなんてことをしていて、そんな僕の心の秘かな拠り所は彼女だけだった。そして仕事が一段落したと思った矢先、僕は心の拠り所を失ってしまった。仕事のダメージは予想以上に尾を引き、彼女からは優しく拒否された。泣いたのは久しぶりだった。そして僕の精神は今までにないくらいに疲弊している。今にも崩れ落ちそうなくらい。どうしようもなく現実に打ちのめされている。亡霊のように日々を生きよう。そして時が僕の心を癒し、鍛練してくれることを今はただただ願うことしかできない。今はもう、力が出ない。

もし、今の僕に救いがあるとすれば、願わくば僕と同じような気持ちになった人の慰めになりますように。生きる活力が沸いてきますように。